(最終回)
いよいよこのiMacレポートも最終回を迎えた。最近になって、iMacのマザーボードの仕様が変わったとか、キーボードからの強制再起動ができないのは単純な回路のバグだったとか、来年にはFireWireを標準装備した新しいiMacが出てくるとか、色々気になる話題もあるが、それはまた別の機会に触れることにしておこう。このレポートの締めくくりとして今回はiMacを何故オレは買ってしまったのか?ということを中心に書いてみよう。
まず、今までオレが使ってきたのがこのPerforma5410だ。買ったのは今から2年前、当時としてはなかなか高性能なマシンだった。PPC603e/120MHzのCPU、最大136MBのメモリ容量、ハードディスクは1.6GB。PCIスロットは1つしか使えないが、結局今に至るまで何も差してない。内蔵モデム(22.8Kbps)はしばらく使っていたが、その後Pippin@用のモデム(33.6Kbps)を(たしか)2,980円で入手したので外してしまった。ソフマップで下取りに出したが、500円にしかならなかった。
まぁとにかく性能にはあまり不満はなかった。強いて挙げるならモニタが32,000色までしか表示できないこと。インタウェアから出ているグラフィックカードを入れてフルカラー表示させようかとも思ったが、50,000円近くするのでちょっと決心が尽きかねた。
で、そこまで費用をかけるならもう1台もっと高性能なPowerMacを買おうと思った。そのうちG3マシンが安くなってくるだろうから、頃合を見計らって乗り換えようと思っていたのである。このPerformaはインターネット専用にするか、もし置く場所がなければLC475を使っている兄にあげる積りでいた。
当初の計画ではG3MT266が25万円を切ったら買うつもりだった。しかし、何か引っ掛かるものがあった。確かにこれを買えば速いマシンが手に入る。でもそれだけのために全部あわせて30万円以上するものを買うのはいったいどういう意味があるのだろう。
そんな時iMacが発表された。これだと思った。ちょっとくらいCPUが遅くても、モニタが内蔵だろうと、SCSIがなかろうと、PowerMacなんかより断然いい。
コンピュータ業界というのはまだ歴史も浅いし、売る側のマーケティング戦略もそれ程成熟しているとは言えない。右はうちにある掃除機だが、こんな感じのものだ。掃除機は日常的に使うものだし、ちゃんと吸い込むだとか、ゴミを捨てるのが楽にできるだとかといった基本的な性能はもちろんのこと、見た目も愛着のわく様なものでなくては売れないだろう。
もちろん、掃除機はかなり生活必需品の部類に入るものだからコンピュータと簡単に比較する訳にはいかない。コンピュータはある人にとっては事務用品だし、ある人にとっては趣味のための道具、また、単に何となく持っていたいという場合もある。それぞれの目的にあわせた製品があって当然なのにどうもこれまではその区分けがあまりされていなかったように見える。だから「速けりゃ売れるだろう」みたいなところがあって、どれもこれも似たような外見のベージュ色の箱ばかりだったんだと思う。
速けりゃ売れる、というのは何かの業務に使う事務用品の論理であって、趣味で使う人のためのものではない。ちょっと誤解を恐れずに言えばコンピュータの性能が良くなるのはある意味じゃ当然の成りゆきなのだから、それだけで売ろうというのはどっかで行き詰まるはずだし、買う側にとってもいいことではない。なにしろ1年も経てば性能は簡単に2倍くらいにまでなるのだから、新製品が出る度に悔しい思いをすることになる。もちろん、性能が良くなるのが悪いといっているのではない。
左の写真は釣りに使うリールだが、左が今から8年ぐらい前に買ったもの、右はつい先日買ったものだ。値段はほぼ同じ、でも性能は格段に良くなっている。ただ、このスピニングリールというものの基本的な機構は、たぶんここ20年以上変わっていない。せいぜい素材が変わっているとか、ボールベアリングを使うようになっているとか、そんな細かい部分の改良だ。
しかしリールについていうと、よっぽどデカイ魚を細い糸で釣るような場合を除いてある程度以上の性能アップはあまり意味がない。オレはこのリールを使ってブラックバス釣りしかしないので(この魚はせいぜい大きくても40cmくらい)、8年前に買ったリールの性能でも充分だ。壊れてるわけじゃないし、まだまだ使える。でも何となく買ってしまった。何故だろう。もちろん性能が良くなっているからということもあるが、それだけでは買うことはなかっただろう。これも結局外見が変わったからだ。正直なところ、全く同じデザインで性能が良くなっているだけなら買おうと思わない。
釣り具業界では何年か前からデザインに懲り出した。まぁ、そんなに優秀なデザインがあるわけではないのだが、ただ性能が良いだけでは売れなくなってきたんだと思う。特に最近になって女性の釣り人(といわずに"アングラー"などといったりするのだが)も増えたし、実用一点張りの汚らしい器械ではダメになってきたのかも知れない。
話をiMacに戻すと、コンピュータ業界もようやく見てくれを気にするようになった、というのが今の状況なのだと思う。SONYのVAIOなんかもそういう流れの一つかも知れない(でもオレはちっとも欲しいと思わないが)。iMacはそれを最大限にやってみただけのことだろう。iMacのデザイナーはかつてのデザイン言語という考え方を否定するともとれる発言をしている。これはある意味で実に当たり前のことを言っているのに過ぎない。デザイン言語なんていうのは結局、デザイナー側の勝手な都合みたいなものだろうし、ホントに私たちが欲しい物がそんなものからつくられるとは思えない。
もちろんiMacは見てくれだけではない。性能はモニタが選べないだけでG3DT233(もう売ってないが)とほぼ同じ、しかも価格はそれよりずっと安い。様々な使い易さのための工夫もある。
変な言い方になるが、iMacはコンピュータとしてはかつてない程まともな商品なのだと思う。リーズナブルなのだ。定価通り178,000円で売っていても全く腹が立たないし、きっとほとんど値下がりしないだろう。買って1ヶ月もしたら何万円も値段が下がって悔しい思いをすることもない(たぶん、そうだろう。そうであって欲しい)。iMacは納得して買えるものだからこそオレは買ってしまったのだ。PowerMacは確かに高性能だが、それだけである。納得のいく買い物にはならない。
もちろん、オレの持っているPerformaとiMacはコンセプトがダブることも分かっている。Performaの売りは何よりも一体型で設置が簡単、いろんなバンドルソフトが付いてて買ってすぐに使い始められる。そして「Internetスタータキット」があるおかげでインターネットに簡単接続。これはほとんどiMacのコンセプトと同じだ。
しかしそれでもいいのだ。このPerformaはもともと研究に使うために買った。それで使うのはワープロとExcel、DeltaGraphそれとクラリスワークスぐらいなものである。コンピュータの処理速度がシビアに要求されるような作業は全くない。だからこのPerformaは研究専用にして、iMacはインターネットに繋いだり、デジカメの画像を加工したり、3Dグラフィックをつくってみたりと、アソビに使うことにしたのだ。
こうすると自分自身の気持ちの切り替えもうまくいくし、Performaがベージュ色のぐったりとするようなデザインでも「どうせ研究用なのだから」と割り切れる。ただ、なぜか最近iMacに向かっている時間の方が遥かに長くなっているようではあるのだが。
ということでiMacしちゃったオレなのだが、そのおかげで快適な生活を送っている。どうです、皆さんもiMacしちゃいませんか?