世の中はクリスマス一色だ(断言)。なぜかこのページにも怪しげなBGMがついている(かなりてきとーに作りました。読み込みに時間がかかって申し訳ないけどクリスマスということで許して!)。ということで、クリスマスにピッタリのアルバムを紹介しよう。しかしどうピッタリなのかは良く分からない。何しろオレはクリスマスには色々な悪い思い出が、いや、止めておこう。とにかく、人並みなクリスマスを過ごしたくないひねくれ者のあなたにはうってつけのアルバムだ。
まずはクリスマスらしく「サンタが街にやってくる」で始まるポール・ブレイの『My Standard』(Steeplechase,1985)を聴こう。しかしこの演奏は普通じゃない。きっとこのサンタはサングラスをかけてて、トナカイの牽く橇なぞでなく、真っ赤なオープンカーかなんかに乗っていて、カーステレオを最大音量で鳴らしつつ、時々ヤクを打ったりしながら銀行強盗をして回っているに違いない(どんなだ)。
まぁ冗談はさておき、こいつは1980年代のピアノトリオのアルバムの中でベスト10にぜひ入れたい。このアルバムは別にクリスマス曲集ってワケじゃないのだが、ブレイらしいスタンダード曲の料理が楽しめる。ベースはJesper Lundgaard(イエスパー・ルンガーとよむのだろうか?)、ドラムスがBilly
Hart。このメンバーはなかなかいいのだが、残念なことにこのアルバム以外吹き込みがない(ブレイとルンガーとのデュオでなら2枚ほどライブ録音があるのだが、また別の機会に紹介する)。
さて、次に取り上げるのはマイルスだ。『COOKIN' AT PLUGGED NICKEL』(CBS,1987)、録音が1965年の12月22〜23日。PLUGGED NICKELというシカゴのクラブでのライブだ。これを聴いてみると「こんなクリスマスを過ごしている人もいるのだなぁ」などと変に感心してしまう。「キーンコーンカーンコーン」という「If I Were Bell」のお馴染みのハッピーなイントロに続いて出てくるのはまさに地獄絵図。2曲目の「Stella by Starlight」にしてもひたすら暗い。どんな星影なんだ。死兆星か。まさに絶望のどん底という感じ。まぁ、この時期のマイルスというのはひたすら暗いのが特徴だから仕方ないのだが。
真面目にこのアルバムについてちょっと解説すると、これは『プラグド・ニッケルのマイルス』として有名な2枚組のアルバムと同日のライブの未発表テイク集。本来ならこちらの方を紹介するのが筋ってもんだろうが、あえて未発表テイク集の方を取り上げるのが鼻行類研究所ならではといったところだ(実は単に持ってないだけという噂もある)。とにかく、このライブにみなぎる緊張感は何なのだ?という疑問が湧いてくる際どい演奏内容だ。
実はこのライブの前まで、親分マイルスは病気か何かでしばらく休業していた。で、残るメンバーたちは親分の回復をじっと自宅待機、という事にはならないのでその辺のライブハウスに出入りすることになる。1965年といえばフリー・ジャズ全盛の世だ。自然と彼等もその洗礼を受けることになる。
仕事に復帰した病み上がりのマイルスは何だかメンバーの様子がおかしいのに気付く。なんといっても特にあからさまなのはトニーちゃん(drums)だね。親分が吹いてる間はわりと大人しいんだが仲の悪い?ショーター(tenor sax)が吹き始めたりするとどんどん突っ走る。ショーターも負けじとお得意の宇宙に向けて放つフレーズで応戦する。ハービー(piano)もセシったり(セシル・テイラー化すること)、落ち着いた風貌のロン・カーター(bass)までもが長い指を駆使した怪しげなベースラインを弾き出す。そこでマイルスが、おうおうてめえら勝手なことしやがって。フリーだか何だか知らねぇがジャズってのはな、こうやるんだっぜっ。と、若い弟子たちに引導を渡してめでたしめでたし、というのがこのライブだ。
ということで今回はクリスマスに聴くときっとぐったりと疲労するアルバムを紹介した。それではメリーXマス&良い新年を。