Summer Jazz


Jul.14

 夏はとにかくドバーっといくのが筋合いってもんである。冷房の効いた室内できれいにアイロンのかかったシャツを着て澄ましているようなブルジョア野郎なぞに用はない。ジリジリと照りつける太陽の下で汗だくになりつつ「今日も夏いぜぇっ」などと意味不明の台詞を吐きつつ2m以上に育った岸辺の葦をかき分けブラックバスを釣る有様こそ相応しい。よく分からんが。
 とにかく、夏に聴くジャズもかくありたい。予告には思わず「夏はフリージャズだ!」と書いてしまったが、よく考えてみたらオレの持っているレコードの中で夏向きのフリージャズはあまりない。というか、フリージャズのアルバム自体あまり数がない。というワケで急遽予定を変更して「夏はドバーっといきましょう!」ということになったのだ。それくらいはじめから考えて予告を出せ!などというもっともな指摘はもう聞き飽きたぜ(開き直ってどうする)。
 で、だ。まずは山下洋輔トリオの『CLAY』から。山下洋輔(piano)、坂田明(clarinet,alto sax)、森山威男(drums)というメンバーでNew Jazz Festival(ドイツ、1974年)に出演した際の録音である。「ミナのセカンドテーマ」と「クレイ」の2曲しか入っていないが、「ミナ〜」などは28:50!という白熱した演奏で決して買って損はしない。白熱の余り(たぶん)森山が時々「キョエー」などと雄叫びを上げるのも聴きどころだ。
 山下洋輔はこの頃(今でもそうかも知れないが)ステージが終わるとパンツを履き替えていたようだ。で、いくらアンコールがあっても履き替えた後だと「もう着替えがないから」という理由で絶対に応じない。確かにこんな演奏をしてたら汗もかくだろうし、汗ばかりでなく思わず他の水分も(以下3行削除)。
 山下トリオはこのメンバーが一番よかったとオレは思っているのだが、そのあとでドラムスが小山彰太に交代した後の『MONTREX AFTERGLOW』もなかなかいい。これもライブ録音(モントルー・ジャズ・フェスティバル、1976年)で、1曲が20分以上という長尺の演奏だ。
 たぶんこの頃に坂田明はタモリらと共に「ハナモゲラ」を完成させたのだろう。1曲目の「ゴースト」の中で「コネコネコノコオコゼノコォ〜」と叫んでいる。ドラムスの小山は前任の森山に比べ繊細な音づくりだ。また、本筋とは関係ないが、彼は大橋巨泉の後輩に当たり、「ハナモゲラ和歌」の名手でもある。
 山下洋輔トリオばかり聴いているとだんだん性格が破壊的になって夏の終わりにはブタ箱に入っている事態も十分考えられる。それを中和する意味でちょっとだけ爽やかな路線に移ろう。で、Don Pullenの『LIVE...AGAIN』だ。これまたモントルー・ジャズ・フェスでのライブ録音なのだが、こちらはずっと新しく1993年。「The African Brazilian Conection」というメンバーなのだが、これは1991年にスタジオ録音で『KELE MOU BANA』というアルバムを出して以来のもの(だと思う。ただしドラムスは入れ替わっている)。2つを聴き比べると、このバンドは(間に2年近い熟成期間があることを割引いても)ライブの方がずっといい演奏をする。そしてなにより夏向きなのだ。
 アフリカン-ブラジリアン・コネクションというだけあって、曲はどれもラテンっぽかったり、アフリカっぽかったりするし、リズムも複雑なやつもある(試しに自分で弾いてみたら妙に難しかった。いちいち考えてるとこういう曲はできないのでノリを体で覚えてしまうのがよい)。ま、とにかく、ライブらしい熱気が伝わってくる楽しいアルバムなので、何も考えずに一緒にノッてしまうのが正しい聴き方。
 さて、ここまで来たら最後もライブ録音もので締めくくろう。Charles Lloydの『Forest Flower』。Charles Lloyd(tenor sax,flute)、Keith Jarrett(piano)、Cecil McBee(bass)、Jack DeJonette(drums)という今では考えられないような豪勢なメンバーだ。1966年モンタレー・ジャズ・フェスでのライブ。ただしうち2曲(「SORCERY」「SONG OF HER」)はスタジオ録音に観客の拍手を合成した「偽ライブ録音」である。なにしろ拍手が毎回同じなんだから(笑)。それはともかく、夏らしくドバーっといくのに最適な1枚である。ロイドはヘロヘロと吹きまくるし、キースは時折「アゥェー」などと叫びつつジャカジャカ弾きまくるし、デジョネットはズドドドドッと、セシルはブンブンいってるし、ってな具合である。
 皆さんもこれらを聴いて夏らしくドバーっといって欲しい。ただし、「ドバーっといっちゃったらデキちゃって」などという苦情についてこちらでは一切関知しない。ドバーっといっても困ったことにならない様に対策をしておくのが良識あるオトナの嗜みというもんです。


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