Jazz and Me


Aug.26

 ジャズとの付き合いは結構長い。オレが中学生になった頃、兄貴がジャズをよく聴いてた。兄貴と言っても年子だからヤツも中学生だったのだが、そんな所からジャズを聴きはじめた。
 そのしばらく前からオレはトランペットを吹いてて、吹奏楽部でちゃんちゃらおかしい吹奏楽向けの曲(知る人ぞ知る「序曲式典」だとか)を演奏していたのだ。それは大勢の中の一人として部品のように扱われ、とにかく譜面通りに演奏する事を強いられるちっとも楽しくないものだった。
 そのころ兄貴が何枚か持ってたジャズのレコードの中にいわゆるディキシーランド・スタイルの演奏があった。こいつを初めて聴いた時は何だか笑ったね。「おいおいお前ら勝手なことしやがって」という感じだな。だけど何回か聴いてるうちに一見デタラメやっているようでいて、即興でつくられてゆくそれらの旋律同士がちゃんと意味を持って対応してることが分った。それを知って改めて驚いた。
 人の書いた譜面通りに吹いてつまらない曲しか演奏できない吹奏楽なんかより、自分の思ったように即興で演奏をしてこんなにカッコいいことができるジャズの方が何百倍もいいと思った。自分でもやってみようと思ったが、これがまた難しかった。そんな次第でますますジャズという音楽の持つ魅力に惹かれていった。(つづく)


Sep.3

 そんな訳でジャズに染まり出したオレだったのだが、しばらくは兄貴の買ってきたレコードを聴いたりする程度だった。吹いていたトランペットも歯の矯正をはじめたのでほとんど吹けなくなり、自分でジャズを演奏する機会もなく月日が流れた。
 状況が変ったのは大学に入学してからで、その頃になるとほとんど歯の矯正も終わりつつあり、だいぶ楽器を吹ける状態になっていた。うちの大学にある唯一のジャズ研に何気なく入ったところ、すっかり生活のほとんどがジャズ漬けになってしまった。もちろん大学の講義にはちゃんと出ていたのだが、それ以外の時間はほとんどジャズ研の部室に入り浸り、ラッパを吹いたりピアノを叩いたりしていた。
 そしてもっと色々な演奏を聴きたいという欲求からレコードを買いはじめ、親からもらっていた小遣いのほとんどはレコードになってしまった。ちゃんと数えたことはないが、今では250枚以上あるのではないかと思う。右にあるのがそれだが、結構場所をとって大変なのだ。それになんといってもLPは重い。最近部屋の模様替えをしたのだが、このレコードを入れてある棚を動かすのが一番手間取った。
 ちょうどオレがレコードを買いはじめた頃と言うのは世の中でだいぶCDが普及し終わった頃で、行きつけのDiskUnionなんかでも日に日にLP売り場が狭くなり、新譜の入荷が減ってゆくという状況にあった。
 だから欲しいLPを見つけたら無理をしてでも買っておかないと二度と買えなくなる危険があり(実際その頃買いそびれて未だに手に入らないヤツがある)、そんな感じでレコードの枚数は急激に増えていった。
 それらのレコードをせっせとテープに落としては、大学までの行き帰りの電車の中ウォークマンでジャズをオレは毎日摂取し続けたのだった。その結果、こんなオレでも人並み以上にはジャズを聞く耳が肥えていったように思う。そしてそれは少なからずジャズを演奏することにプラスに働いた、と信じたい。


Jazzのページ