なんでもトップウォーター


クランクベイトは再生するか/Beginning

Jun.15

 ここ何年かの間、オレはバスを釣るのにトップウォーターしかやらない。理由は簡単で、他のやり方はつまんないからである。それにもうやり方を忘れてしまった。で、バス釣りにいく時のタックルボックスにはトップウォーター用のルアーしか入っていない。
 釣り場に行くとしばしば様々なものを拾う。ウキだとか、針だとか、更にはちょっと直せば使える竿をまるまる1本拾ったこともある。そしてルアーである。特に急な減水後あるいは大雨の後のダム湖では1日で10個ぐらい拾うこともある。
 しかし、だ。世の中の人が使うルアーの多くは、そしてどこかに引っ掛かっていてオレに拾われるのを待っているルアーというものはほとんどがクランクベイトなど「潜る」ルアーばかりである。とりあえず見つけたら拾うが、一向にオレには使い道がない。で、気がつけば20〜30個もの要らないルアーがたまってしまった。誰か釣りをする友人にでもあげればよいとも思ったが、どうもオレの回りにいるヤツらは欲しがらない。一緒に釣りに行く友人N木君などはほとんどトップしかやらないので(ただし彼はトップで釣れないとなるとエサ釣りを始める)クランクベイトなどもらってもしょうがないというのだ。
 ある日、この役立たずなルアーたちの処遇を考えていたオレは、そのうちの一つを眺めているうちにふとひらめいた。そうか、これなんてリップを削ればペンシルになるな・・・
 思い付いたらすぐに実行に移すのがオレの悪い癖だ。次の瞬間には手にヤスリを持ってゴリゴリとリップを切り落としにかかっていた。うまくボディーの曲面に合うようにきれいに削るのは思ったよりも手間だったが、10分ほどの作業で一つのペンシルベイトが出来上がった。このクランクベイトは割に浮力があって胴体の前面が丸みをもっているのでペンシルとしてはなかなかいい働きをするはずだ。ただ、ラトルが入っててカラカラいうのがちょっと気になる。
 まあいい。全く使えないよりはずっとましだし、その他の点ではまずまずの仕上がりだ。これに気をよくしたオレは他のも皆トップウォーター化してしまおうと勢いづいた。が、他には適当なのが見当たらない。何しろトップアイがリップについているディープダイバーばかりなのでリップを切り落とすワケにはいかないのだ。う〜ん、クランクベイト総トップウォーター化計画は早くも挫折か。
 とりあえずトップウォーター化に成功したこいつを持って釣りに行くことにしよう。というワケで次回予告、「実釣編」につづく。


Think different.な人/Conclusion

Jun.17

 ということで実釣編。ま、とりあえず広いところでルアーを動かしてみることが第一に重要なことだ。結果魚が釣れればなお良いが、釣れりゃあいいってもんじゃない(と先に言い訳をしておく)。
 で。まずは動かしてみる。うーん、何かちょっとペンシルらしからぬ動きだな。どちらかと言うとクランクベイトを水面でチョコチョコ引いてるような動き、ってそれじゃあリップ削った意味ないじゃん(笑)。よく見ればちょっと頭の方が下がった姿勢で浮いてるので、どうしても潜ろうとする力が働いてしまうらしい。事実、ゆっくりリーリングすると見事に潜ってゆく!恐るべしクランクベイト。リップを失ってもまだ潜ろうというのか。
 と、感心ばかりしていられないので浮き方を調整する。簡単な方法としてフックのサイズを変えたりしてみる。最もいいバランスはもとから付いていたサイズ(4番)のフックを後ろにだけ付けたとき。まずまずペンシルらしい動きをする。でもこれだと魚がアタックした時に針掛かりが悪そうだ。
 さらに試行錯誤を重ねるが、このバランスを超える様なうまいフックサイズの組み合わせは見つからない。諦めてこの状態で使うか。考えてみりゃスプーンだとかはみんな後ろにしか針付いてないもんな。いいんだいいんだこれでいいんだきっとゆるしてもらえるだろうよ。
 などと無理矢理納得しようとしていたその時、霊感的着想が私の脳裏を走った。

 「前後を逆にすればよいのだ」

 ふふふ、そうだそうだ、これだこれだ、コロンブスの卵だ、発想の転換だ、Think Different.だ。自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだからな(ほとんど意味不明)。
 早速はやる気持ちをおさえつつテールに付いていたフックを頭に付け替え、動かしてみる。・・・素晴らしい。完璧だ。さっきまではまぁペンシルベイトとして使える、という程度の動きだったが、今度のは違う。市販のペンシルに比べても全く遜色ない、いや、それらを遥かに上回るであろう動きだ。
 ただ一つ問題なのはフックが接近しているので絡んでしまうということ。でもこれは見た目よりはずっと絡みにくいことが分かった。フックをダブルフックに交換すればほとんど絡むことはないだろう。
 そんな経緯で出来上がったこのペンシルベイトだが、今回の釣行では実際に魚を釣るまでには至らなかった。この形に落ち着いたところで猛烈な風が吹いてきてとても釣りどころではなくなってしまったのだ。天もこの革新的なペンシルの誕生を怖れたか。しかしこいつが実力を発揮する日はそう遠くないだろう。


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