今日は水草の話題。といっても水草を普通に水槽の中で育てるのではなく、あえて陸上植物にして育ててしまおうという、鼻行類研究所ならではのバカバカしい話題だ。
水草として出回っているもののかなり多くが陸上でも生きられるということはよく知られている。これらの植物は周りの状況に応じて水中生活をしたり、陸上植物として生きていたりするのだ。もちろん、水中で育っていたものをいきなり外に出して土に植えたりしたらそのまま枯れてしまう。少しずつ陸上生活に慣らしていかなくてはダメだ。そこでここでは陸上化するのに適した水草選びから、その方法までについて、鼻行類研究所の研究の成果を紹介してゆく。
まず、水草選びから。普通の鑑賞魚専門店で手に入れることのできるものの中で、水槽内での育成が比較的容易で、価格も安いものがおすすめだ。このなかで絶対に陸上化しないものもあるので注意しよう。例えばアナカリス、カボンバ、Potamogeton属のものなどである。ただし店員に「これは陸上でも育ちますか」と聞くのはやめよう。多分たいていは正確に知らないし、あからさまに変に思われるのがオチだ。
陸上化するものを見極めるには、水槽で育てているうちに伸び過ぎて水面から飛び出し、そのまま空中でも伸び続けるのはたいてい大丈夫と思っていい。そんな場合によくみてみると、水中にあるときと水上に出たものとでは少し葉の形や色などが異なっていることに気付くだろう。水上に出たもののほうが葉がツヤツヤしていて少し堅めになる。しかし、いちいち全部について自分で調べるのも大変なので、水草の解説書などを見るといい。この分野で最高峰といえば吉野敏『水草の楽しみ方』だが、ちょっとこの本は高い。まぁ少しこれには劣るが、価格が手頃だという点で成美堂出版社から毎年出ている『日本と世界の水草カタログ』あたりもおすすめだ。
とりあえず試してみようというむきにはアマゾンチドメグサ、ロタラ・インディカ、ルドウィジアあたりがいいだろう。これらは水槽内での育成が容易な上、陸上化するのも簡単だ。これらよりはすこし難しいが、アマニア・グラキリスなんかも陸上化させると楽しい。
さて、水草の用意ができたらいよいよ陸上化させよう。準備するものは水草の他、洗面器、陸上化した水草を植え込む鉢と培養土などである。もしも手許に手頃なものがなければいますぐ買いに行こう。(つづく)
というワケで続き。水草を陸上化させる方法を紹介しよう。
まず、洗面器に水をはって水草を入れ、日の当たる場所に置いておく。すると水面から飛び出して成長を続ける。1週間ほど経って水上の部分が2〜3cm程度以上まで育ったらいよいよ土に植え込む。
植えるのは鉢でもいいし、夏の暑い時期ならば露地植でも大丈夫だ。これから寒くなるので、ここでは鉢に植え込むことにしよう。土は一般的な培養土というヤツでいい。これに先の方だけ陸上化した水草を植え込むことになるのだが、重要なのは根だ。
基本的には、下の方の陸上化していない部分は切り落として、先の陸上化している部分だけを使うのだが、必ず根が出ている部分を含めて欲しい。完全に陸上化していると根も自然に生えてくるのだが、この段階ではちょっと難しい。まだ陸上生活にすっかり慣れてはいないのだ。だから、くれぐれも始めのうちは水をやるのを忘れないで欲しい。
土に植え込み、数日が過ぎると根も安定してきて成長が良くなってくる。種類によっては成長が非常に早く、あっという間に鉢いっぱいに拡がる。また、花を咲かせて種が採れるものもある。
左はアマニア・グラキリスAmmannia
gracilisだが、これは陸上化させたものに花が咲いて、そこからこぼれた種から生えてきたもの。完全に陸上化しているのだ。今後の課題はこれを再び水中生活に戻す技術の確立だな。
そんなことが何の役に立つんだ、と言われるかも知れないが、鋭い人ならばもうお気付きだろう。そう、花を咲かせて種を取れば水槽内でトリミングをくり返して殖やすよりもずっと沢山の株を得られる。そしてちゃんと有性生殖で殖えたものだから個体の老化もない。ただ、水草はかなり品種によって性質が大きく変わってくるものも多いから、もしかする全然違った外観のものが出てきてしまうこともあるかも知れない。
さて、アマニア・グラキリスのように種が採れるものとしては、今のところアマゾンチドメグサHydrocotyle
leucocephalaを確認している。これは日本に自生するチドメグサH.
sibthorpiodesと同属の種だからなかなか逞しいヤツで、あっという間に殖える。鉢植えではすぐにあふれてしまう。露地植にするとどんどん広がっていって楽しい。ただ、やはり彼等に日本の冬は寒すぎるようだ。